これぞ”青春小説”『砂漠』

『砂漠』

 

砂漠 (新潮文庫)

砂漠 (新潮文庫)

 

 

言わずと知れた伊坂幸太郎の青春小説ですよね。

 

恥ずかしながら僕は読んだことがなく、先日読了しました。

 

どうだろうなあと思いつつ読みはじめたのですが

 

面白い。

 

読み進めるほどどんどん引き込まれていく。

 

あと1ページだけ、とページをめくる指が止まらない。

 

終わってみるとあっという間で、心地の良い読後感がありました。

 

青春小説はミステリーなどと比べて面白かった点がぼやけがちなのですが、自分なりに考えて見ました。

 

沢山ある魅力の中で、僕が特に面白いなあと思ったのは2つです。

 

1つは西嶋という男の魅力

変わった男なんですよね。偏屈であり、我が強い。一方で前向きで努力家である。そして何より素直さとかわいげがある。そんな彼に惹かれた人は多いんじゃないかなあと思います。

 

個人的には。メガネをかけたふくよかな、いってしまえば“キモオタ”みたいな容姿も、彼の魅力の1つであると思いました。

 

新しいスーツを買って子供のように「似合ってるかな?」と聞いたり、学内でもトップクラスの美女東堂に好意を寄せられたり、それは西嶋の容姿だからこそかわいく見えるんだと思います。

 

西嶋は西嶋だから良いのです。

 

そして、2つ目は、小さな各エピソードを通じて(彼ら彼女らの学生生活)を通して、登場人物が成長し、変化していく部分です。

 

ホストとの賭けボウリング。強盗との接触。麻雀。こうした1つ1つが魅力的な小さなエピソードが、繋がり、東堂と西嶋の恋の行方。ホスト礼一との因縁など、全体での大きなエピソードを作っています。

 

そして、それを通じて、北村が他人行儀で冷たい鳥瞰的視点から変化したり、西嶋が少しづつ東堂に気を持ち始めたり、鳥井が片腕を失った絶望から立ち直ったり、成長していきます。

 

小さなエピソードを通して、彼ら彼女らが楽しみ、悲しみ、喜び、落ち込み、右往左往しつつ少しづつ変わっていく様子は、まさに“青春”であると感じました。

 

前評判通り、それ以上の、最高の青春小説でした。読んだことがない方には是非、おすすめしたいです。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。またよろしくお願いします😎

僕にとってのラジオ

fm802「YUMEGOAROUND 」

 

DJのゆめさんの声を聴くと何故か落ち着きます。

 

大学4回生になった今、高校生の頃は聞いたこともなかったラジオは、すっかり僕の生活の一部になりました。

 

特にこの番組は、僕にとって、実家みたいな場所なのです。

 

ゆめさんの声を聞いて、リスナーのリクエストを聞いて、阪神高速の交通事情やら、梅田のイベントやらを聞いていると、いつもの場所に帰ってきたんだなあと感じることができます。

 

僕はまだまだラジオを聴き始めたばかりですし、それほど詳しいわけでもありません。

 

でもラジオには本当に不思議な魅力がありますよね。

 

色んなエンターテイメントの選択肢があって、VRやら3Dやら、膨大な情報量を提供できるコンテンツがあるなかで、音だけでリスナーをこんなに楽しませることができるラジオは凄いパワーを持っていると思います。

 

あるいは、音だけだからこそ、それがラジオならではの魅力になっているのかもしれませんね。

 

すごいスピードで新しいメディアが生まれて、その形を変えていく今の時代ですが、僕はラジオが大好きです。

 

 

 

 

 

 

 

Time Capsule

今週のお題「わたしの好きな歌」

 

葛城アコは雨の日に音楽を聴くのが大好きだ。

 

彼女はスマートフォンでなく、16 ギガのiPod nanoに安いTSUTAYAで買った1500円のイヤホンをつないで音楽を聴く。

 

本来赤色のiPod nanoはすっかりメッキが剥がれて、下地の銀が見えている。古い上に、容量も大きくはない。だから、新しい曲を入れるたびに、聴かない曲を消さなければならない。でも、限られた用量という小さな箱に入った音楽だからこそ、なんだか宝物みたいに感じられて、アコは気に入っていた。

 

アコは適当にプレイリストを選んで、ポケットに手とiPodを突っ込む。たとえ冬でも彼女は手袋をしない。iPodの液晶が反応しないからだ。

 

イヤホンからは聞き慣れない曲が流れた。でも絶対に聞いたことはある。

 

この曲なんだっけ。

 

iPodの画面を確認する。

 

School Food Punishmentの『butterfly swimmer』だった。

 

懐かしい。

 

Scool Food Punishmentを知ってる同世代の人はあまりいなかった。では何故アコがこんなゲキ渋バンドに出会うことができたかというと、高校時代、憧れの先輩に教えてもらったからだ。

 

アコは先輩が好きで、なんでも真似した。

 

特に先輩は音楽が好きだったこともあって、先輩が好きな曲は積極的に聴いた。

 

曲の感想という名目で連絡ができるし、会うたときに話す共通の話題もできるからだ。

 

特に先輩が好きだったのがこの『butterfly swimmer』だ。

 

先輩が好きで好きで、もしかしたら付き合えるんじゃないかなんて思っていたときはこの曲がたまらなく好きだった。先輩のことを考えながら毎日のように聴いた。

 

でも先輩との恋が失敗すると、途端にこの曲を聴かなくなった。聴きたくないとすら思っていたかもしれない。

 

でも時間が経って、今こうして聴いてみると、当時の思い出や、感情が蘇ってくる。

 

アコは音量を少しあげた。

 

『butterfly swimmer』が入っていたプレイリストは『嫌いな曲』

 

胸をときめかせ、先輩に思いを馳せて曲を聞いた気持ち、この曲を聴いては先輩のことを考えてしまっていたこと、いろんな感情がアコの脳内を駆け巡った。

 

iPodには、過去からの贈り物が詰まっている。

 

アコはまた音楽が好きになった。

 

曲が終盤にさしかかろうというところで、アコは上機嫌で『butterfly swimmer』を別のプレイリストに移した。

 

先輩、元気にしてるかな。

 

 

オススメの小説『蜜蜂と遠雷』

 小説って何が面白いんだろう。

 

私は大学生になるまで、本を読んだことがなく、ある種の偏見を持って本に接してきました。

 

活字だけで情報量の乏しい本よりも、画像がある、あるいはそれが動く、音声もある。漫画や、アニメ、映画の方がずっと面白いと思って生きてきました。

 

そんな私が大学生になって本の魅力、活字の魅力にどっぷりと使ってしまった。

 

そんな私が、オススメする本を紹介させていただきたいです。

 

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

 

 

恩田陸さんの蜜蜂と遠雷直木賞受賞作です。私の大好きな作品の1つです。

 

この本は、他のエンターテイメントにはない、本ならではの魅力が強い作品であり、その魅力は、広い意味で本を読む理由のひとつ足り得ると思います。

 

この本は究極のVR、ないしは体験型のエンターテイメントである、という魅力です。

 

どういうことか。

 

この作品では、ピアノに精通し、ピアノに人生を注いでいるピアニストたちの青春が書かれています。

 

作中で私たちが文字を追う、その時の視点は、そうしたピアノが大好きで、音に敏感な音楽家たちです。

 

彼ら彼女らの視点を追うことで、私たちは音楽家として、音楽を感じることができるのです。

 

例えば、少しも音楽に詳しくない私がオーケストラのコンサートに行っても、音楽に詳しい人が感じるように感じることはできませんし、彼らが楽しむように楽しむことはできません。

 

他のことでも同じです。サッカーを全然知らない人と、サッカーが大好きで自分でもプレイしていた人とでは、同じ試合を見ても、感じ方や、注目している箇所は大きく異なると思います。

 

どれだけVRが発達しても、結局その景色を見るのは、その体験をするのは、自分です。その光景を、体験を、解釈するのは自分の頭です。

 

でも本は違います。作中に音楽に詳しい人物がいて、彼の視点で物語が進めば、彼がどんな風に音楽を感じているのか、文字をたどることで、自分の脳内で、追体験することができます。

 

私自身、自分はこんな風に音楽を聞くけれど、音楽に詳しい人は音楽をこんな風に楽しむことができるのか、と自分の知らなかった世界を味わうことができました。

 

ピアノコンクールなんて少しも興味がありませんでしたが、この本をきっかけに私はピアノのコンサートに行きました。でも少しもこの作品に登場した人物たちのような感じ方をすることはできませんでした。

 

そこで私はピアノを始めて見ました。少しずつですが上達して、ピアノについて知っていく中で、これまでであれば「なんとなくすごいなあ」と思っていた『ピアノの弾いてみた動画』も大きく違って見えてきました。どこがどう凄いのか、わかるようになってきていたのです。

 

この作品で、音楽家の音楽の感じ方という新しい世界を知り、自分自身でピアノを始めて、私の世界は大きく広がったと思っています。

 

本は自分が知らない分野のことでも、その分野に精通した人物の視点でその事象を体験し、その感じ方を追体験できる。

 

これこそ他のエンターテイメントにない本ならではの魅力であると思います。

 

この「蜜蜂と遠雷」はついこないだ文庫版も出ました。

 

よかったら読んでください。この作品があなたにとっての最初の一冊になれば、とても嬉しいです。

 

 

 

 

 

色とモノ

今週のお題「わたしの好きな色」

 

空ってなんでそんな青いんだろう。

 

空が青いのは私にとっては至極当たり前のこと。幼稚園の頃から、先生に空を描こうと言われれば大体の人が青いクレパスを手に取る。

 

調べてみるとなんとなく空が青く見える理由がわかった。

 

実は太陽からは様々な色の光が出ているそうだ。その中でも、青色の光が一番波長が短く、故に空気中の粒子とぶつかる回数も多い。青色の光はぶつかっては拡散を繰り返し、やがて空全体に広がり、天空を青色に染め上げているのだ。

 

あの透き通るように高い夏の青空も自然の産物なのだ。

 

好きな色というのは、ものとセットであるように思う。

 

『空』の青色が好きだ。『トマト』の赤さが好きだ。白い『tシャツ』が好きだ。

 

私には「何を選ぶにも絶対この色!!」みたいに如何なる状況であれ、単独一等賞をとれるほど好きな色はない。

 

私は一つ一つのものに好きな色がある。好きな靴下の色、好きな傘の色、好きな部屋の色。

 

どんな色であれ、その色がぴったりとあうものが何処かにあるんじゃないだろうか。

 

だから私は全部の色が多分好きだ。

 

 

 

 

読書経験0からのスタート

どうして本を読んでこなかったんだろう。

 

大学生になり、初めて本を読んで読書経験のなさを後悔しました。

 

文化人類学を勉強するはずだった私の大学生活。そんな大学生活を送ることはありませんでした。

 

私はどんどん本の世界にのめり込んでいきました。

 

自分で小説を書いて、webライターをして、喫煙所に集まっては教授や友人と本について話をして、 書店でアルバイトをして、ゼミや卒論で出版業界を研究して、本を中心とした大学生活を送ってきました。

 

今の夢は、本の入り口を広げること、そして小説家になることだ。

 

大学生活最後の一年(といっても残り半年である)、少しで本への入り口を広げたいと思い、ブログで本を紹介してみようかなんて思った。

 

読んでくれたら嬉しいです。

同時にここまで読んでくれてありがとうございます。

 

雨の牢獄

今週のお題「雨の日の楽しみ方」

 

雨の日は最悪だ。傘を持つため、片方の手は使えない。もちろん自転車に乗ることも難しい。傘をさしたところで雨の侵入を完全に防ぐことなんてできるわけもないし、足元は跳ねた水でびしょ濡れ。靴の中まで水は襲いかかる。

 

朝起きたら聞こえる雨の音。それがどれだけ私たちの通学や通勤をより億劫なものにするだろう。

 

でも傘は空間を作ることができる。同じ傘に入る二人だけの空間。雨の音が外界の音を、傘が外界からの視界を遮る。

 

長靴をはいて水たまりではしゃいでいたように、いい雨具で、前向きに雨の日を楽しめばいいと思う。

 

最近は雨具もすごくかわいい。

かわいいポンチョを被って、かっこいい傘を持って、誰よりも雨に映えてやりたい。

 

雨の日、最高。